甲状腺外来(内分泌内科)

内分泌内科について

内分泌ホルモンは、身体の様々な臓器から分泌されるホルモンで、全身の健康に影響を与えています。主に、甲状腺や副腎、卵巣、下垂体、精巣、心臓、腎臓、膵臓、肝臓などの臓器から血液中に直接分泌されています。
このうち、甲状腺疾患は発症者が多く、国内では約500~700万人の方が罹患していると言われています。しかし、甲状腺疾患は自覚症状に乏しく、見逃されやすいため、治療が必要でも多くの方が治療を行えていない現状があります。甲状腺疾患の主な症状として、倦怠感や疲れやすさ、動悸、イライラ、足の浮腫み、不眠などの症状が現れます。これらの症状は、うつ病などの精神疾患や更年期障害の症状に酷似しているため発見が遅れるなどの特徴があります。上記の症状があり、甲状腺の異常が気になる方は当院までお気軽にご相談ください。

主な甲状腺疾患について

甲状腺とは

甲状腺は首の前方、喉ぼとけの下に二つあります。蝶のような形状をしている臓器で、甲状腺ホルモンを分泌する機能があります。甲状腺ホルモンは、代謝を活性化したり、成長促進機能を促す役割を果たしています。主に、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)で調整されます。

甲状腺疾患

甲状腺中毒症

血液中の甲状腺ホルモン量が異常に増加した状態です。主に、甲状腺がホルモンを過剰に生成してしまう甲状腺機能亢進症と甲状腺の破壊が原因で起こる破壊性甲状腺炎に区別されます。主な症状は、過剰な汗、暑がり、手の震え、イライラ、食欲亢進、動悸、息切れ、倦怠感、疲れやすさ、痩せなどです。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰に産生される状態です。主に、以下に挙げるバセドウ病や機能性甲状腺結節、TSH産生下垂体腫瘍、妊娠性一過性甲状腺機能亢進症などがあります。

バセドウ病

甲状腺ホルモンが過剰に生成され、甲状腺機能亢進症を引き起こした状態です。TSH受容体に対する抗体がTSH受容体を刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に生成・分泌されるのが原因です。

機能性甲状腺結節・腺腫様甲状腺腫

甲状腺に結節ができることで、甲状腺ホルモンがTSH濃度に影響されずに分泌される状態です。甲状腺に腫瘍ができ、良性と悪性があります。

TSH産生下垂体腫瘍

下垂体に腫瘍ができることでTSHと甲状腺ホルモンが過剰に生成される状態です。難病指定されていますが、手術治療によって多くの患者さんが完治しています。手術治療が難しい場合には、ガンマナイフと呼ばれる放射線治療を検討します。

妊娠性一過性甲状腺機能亢進症

妊娠初期に起こる甲状腺機能亢進症です。おおよそ8~13週頃に発症する一過性の亢進症です。胎盤から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)によって甲状腺刺激作用が起こり、一時的に甲状腺ホルモン分泌が過剰になります。ほとんどが一時的なものですが、稀に実際のバセドウ病に罹患していることもあるため注意が必要です。妊娠中の方で糖尿病を併発している方は、妊娠後期に発症することもあります。

甲状腺の破壊によるもの

破壊性甲状腺炎

甲状腺炎が慢性的に続くことで、甲状腺破壊が起こります。甲状腺内のホルモンが血液中に流れると甲状腺ホルモン濃度が急激に上がります。破壊性甲状腺炎には、無痛性甲状腺炎と亜急性甲状腺炎とがあります。ほとんどのケースで自然治癒しますが、症状の程度によっては対症的治療を行う場合もあります。

その他

甲状腺ホルモンの過剰摂取

海外薬品の直接個人輸入などで薬を摂取した場合、知らずしらずに過剰に摂取することがあります。甲状腺ホルモンは代謝を高めるため、やせ薬などに混ざっていることがあります。海外薬品などには、国内承認のない薬も含まれるため過剰摂取には十分注意が必要です。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモン機能が低下すると、全身に様々な症状が起こります。甲状腺機能低下症には、甲状腺機能そのものが低下する原発性甲状腺機能低下症と、甲状腺ホルモン分泌を指示する下垂体や視床下部に支障が起こり、甲状腺ホルモン機能が低下する中枢性甲状腺機能低下症があります。主な症状は、疲れやすさや無気力、倦怠感、浮腫み、便秘、体重増加、皮膚の乾燥、月経異常、脱毛などの症状が起こります。

原発性甲状腺機能低下症

自己免疫疾患のひとつで、橋本病(慢性甲状腺炎)があります。甲状腺のある喉前方に違和感や腫れが起こります。さらに、首の圧迫感や不快感、心肥大、徐脈、うつ状態などの症状が現れます。

中枢性甲状腺機能低下症

くも膜下出血や脳腫瘍など脳外科手術を行った後に、視床下部や下垂体に支障が起こり、TSH分泌が滞ることで甲状腺機能低下症になることがあります。その他、下垂体自体の疾患が原因となることもあります。

その他

わかめや昆布、海苔など海藻類にはヨードが含まれています。また、ヨード強化卵、ヨウ素(ヨード)の入ったうがい液など、ヨードの含まれたものを過剰に摂取することで甲状腺機能低下症を起こすことがあります。その他、甲状腺手術治療や放射線治療などによって甲状腺機能低下症になることもあります。

甲状腺腫瘍

バセドウ病や橋本病などを発症している場合、甲状腺の変性や破壊が繰り返し起こり、甲状腺に結節ができます。結節が大きくなる場合には、腫瘍の有無を調べる必要があります。なお、甲状腺エコー検査を実施すると、3~4人に1人は、甲状腺に嚢胞や腫瘍が存在すると指摘されます。腫瘍がある場合、悪性の可能性の有無を慎重に調べます。

当院の甲状腺外来について

対象となる方

以下のような症状がある方は、早めに医療機関を受診してください。

  • 首前方・喉の腫れ、しこり、違和感がある
  • 動悸・息切れ、疲労感、疲れやすさ、手の震え、イライラ感、浮腫みなどの症状
  • 健診の結果などで甲状腺ホルモン値に異常を指摘された
  • 眼球が突出してきた感じがする
  • ご家族に甲状腺疾患の方がいる

など

甲状腺の検査について

甲状腺ホルモン検査
(甲状腺機能検査)

まずは問診にて症状について伺います。その後、血液検査を行い、甲状腺ホルモンやTSHなどを調べます。甲状腺ホルモン値に異常があると、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症の可能性があります。

甲状腺超音波検査

甲状腺超音波検査では、甲状腺の大きさや腫瘍の有無を検査します。医療用ゼリーを首に塗布するため、検査を受けやすい服装でご来院ください。

甲状腺の治療について

甲状腺機能亢進症の治療

主に、薬物療法にて経過をみます。ほとんどのケースで薬物療法だけで状態が安定します。ただし、治療は長期間に及ぶこともあるため、定期的に受診を行っていただく必要があります。また、骨粗鬆症を発症しやすいため注意が必要です。薬物療法を行っても治療効果が得られない場合には、手術治療や放射性ヨード治療などを検討します。

甲状腺機能低下症の治療

主に、甲状腺ホルモン補充療法を実施します。治療には、甲状腺ホルモンである合成T4製剤(チラージンS)を患者さんそれぞれに適した容量で内服します。甲状腺ホルモン値を定期的に図り、正常値に維持されているかを調べます。

甲状腺腫瘍の治療

甲状腺に1cm以上の結節が見つかった場合には、細胞診を行って腫瘍の有無を調べます。当院では、穿刺細胞診を行っていないため、検査が必要な場合には専門の医療機関をご紹介いたします。

骨粗鬆症

老化やカルシウム不足、運動不足などによって骨量が減り骨折しやすい状態を、骨粗鬆症と言います。女性の場合は、閉経を迎えることで骨量が減少して骨粗鬆症を発症するリスクが高くなります。骨粗鬆症は、整形外科疾患のように捉えられがちですが、実は骨の新陳代謝を促進させるホルモンの乱れによって起こる内分泌疾患です。主な治療は、食事療法や運動療法など生活習慣の管理を行います。その他、薬物療法でホルモンバランスを調整し、骨折するリスクを軽減させます。

骨粗鬆症の治療について

まずは、食事療法と運動療法を行います。状態が重度の場合は薬物療法も行います。使用する薬は、副甲状腺ホルモン製剤、エストロゲン製剤、ビスフォスフォネート製剤、活性型ビタミンD3製剤を必要に応じて用います。骨粗鬆症の治療は、年単位で継続することで改善がみられます。骨密度が低くなりすぎる前に、治療を始めることをお勧めしております。医師の指示に従い、食事療法・運動療法と服薬をしっかりと行うことで骨粗鬆症を改善し、骨折のリスクを大幅に下げることができます。

副腎・下垂体疾患の
検査・治療について

基本的な血液検査や尿検査によるスクリーニングを実施します。ただし、下垂体疾患や副腎疾患については、病院での精密検査や場合によっては入院精査が必要になります。気になる症状がある方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。問診などを行い、必要に応じて専門の医療機関をご紹介させていただきます。